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第二次世界大戦から文革を経て現代へ…。
日本と中国、2つの祖国を持ったばかりに、数奇な運命に翻弄され、それでもまっすぐに生きようとする主人公・陸一心。
1995年の放送当時、このドラマは深く圧倒的な迫力をもって人々の心に訴えかけ、“一心”という印象的な名前と共にその評判を広めていきました。そして、主演の上川隆也はテレビ界では殆どキャリアのない新人であったため、「あの日本語のうまい中国人俳優は誰?」と取り沙汰されることになります。
それほどまでに、全編の3分の1が中国語!というドラマは衝撃的だったのです。またそれは、上川隆也という俳優の人生を、大きく変える出来事でした。
大抜擢を経ての記者会見、「自分の手足がどういう状態で動いてるのか、わからないまま壇上に進んで行った」と上川隆也さん自身が語るように、何から何まで初めてづくし。「自分の立ち位置は変わっていないつもりでいるのに、周囲で音を立てて奔流が流れていく。
そのスピード感は感じていたけど、受け止める容積がどこにもなかった」そうです。
一心の中国語のセリフは、理解してしゃべっていたわけではなく、本当の丸暗記だったそうで、流暢なセリフから、話しかけられることも多かったが全く理解できなかった…と聞き逆に驚きました。中国語を少しでもかじったことのある人なら、声調の難しい言葉をあれほど膨大に覚えることがどれほど大変かわかるはずです。
第3話などは実に5分間に渡って、一心の独白が続きました。また第5話でようやく妹とめぐり逢ってからの場面は、妹・張玉花役の永井真理子との中国語でのやりとりが10分以上も続いたのです。
その緊迫感のある場面はドキュメンタリーのようで、見る者にとって呼吸をすることすら忘れさせるほどでした。
また労働改造所から戻った一心を養父・徳志が駅で出迎えるシーン
(第3話)、長江下りの船の中、実父・松本耕次と語り合うシーン
(第7話)では、中国の名優・朱旭と仲代達矢の迫真の演技に助けられ、上川さんは演じながら自分の感情がコントロールできなくなる…という状態を初めて経験。そのリアルな心の動きはドラマを超えて、ひしひしと伝わってきます。
そして、第4話のラスト、長春で子供達の足跡をたどれず帰国する父・耕次が汽車で去るシーン、この時汽車を追って走り出す人達は、中国人エキストラではなくこの地で本当に親とはぐれた残留孤児だったというも、上川さんが教えてくれました。
原作者の山崎豊子さんは、最初こそ新人・上川は大丈夫なの?…と口にしていたそうですが、最終的にその演技を絶賛したとか。
山崎さんと言えば、「華麗なる一族」では鉄工所の高炉建設によって対立する親子を描いた作家ですが、「大地の子」では鉄鋼所建設によって絆を取り戻す親子を描いているのも興味深いところです。
一度見始めると、目をそらすことができなくなるドラマ、それが「大地の子」です。近頃ではあまりお目にかかれない、そんな骨太な感動を、とことんお楽しみ下さい。(放送作家・中村結美)













