もう一度、テレビに「輝き」を。
私が一番魅力に感じたのは、この物語が桶狭間から関ヶ原の戦いを経て、さらに江戸幕府が開幕するまでのお話だったから。こんなに長い時代を描いた大河ドラマはいままでなかったんですよ。ということは、新しく出来ることがいっぱいある。時代背景として大きな事件はいくらでもあるので、それを夫婦の物語にからめることでストーリーは大きくひろがると感じました。
前から海外ドラマの「24」の手法を、大河ドラマでやったらおもしろいと確信していて、この機会にぜひ!と思ったんですけど、それは却下されました(笑)。
最初に思ったのは、あの頃も現代も変わらないということ。お城は会社で、殿様が社長で、みんな人事異動でハラハラしている。国替えとか、誰に出世が抜かれたとか、いまと同じですよね。結局、人間はあまり成長しないんだなと…。ただ現代と大きく違うのは戦国時代はあまりにも生と死が隣合わせじゃないですか。いろいろな資料を調べていたら、戦に行った男は取った首を腰紐にぶら下げて帰ってくるらしいんです。夫は疲れて眠るんですが、お城で行なう首実検に出すために朝までにその首を洗って髪を結い直して、首が立たなかったらつっかえ棒をしてきれいに並べておかなければならない。それをやるのが女だったんです。当時は下克上の時代ですから、首の中には隣に住んでいた人がいることもある。明日になったら自分の亭主の首を、隣の奥さんが洗っているかもしれない。そういう状況の中ではきっと男女の情愛も激しかっただろうし、子孫を残したいという気持ちもものすごく強くて、そうした命ギリギリのところで激しく生きていた人々、夫婦の姿を描きたいと思いました。 それにいつも主役は信長とか秀吉とか家康ですよね。でも今回はいつもなら脇役の人たちが主役だった。殿様の目線ではなく、下からの目線という新しい見方で「功名が辻」を書こうと決めたんです。
この人たちがドラマになると、いつもは素敵な部分だけ描かれるじゃないですか。 私は3人のヤクザの組長というイメージにしたかった(笑)。キャラクターが違う3人の恐ろしい親分に仕えた山内一豊という感じで、毒強くこの3人は描いたんですよ。 だから奥さん役の女優さんにも、ヤクザの組長の姉さんみたいになってくださいとお願いしました(笑)。
はい。とくに浅野ゆう子さんは、「わかりました」と言って一発で姉さんを演じてくれました。さすがでした(笑)。
明智光秀です。光秀は教養人で、濃姫と淡い恋心を持ちながらも結局濃姫の夫になった信長を討たなければならなかった。一番教養があって、一本筋が通っていて、いろんな人の気持ちがわかる人なのに。戦国時代はバッサバッサいく人じゃないと成功できなかったんですよ。いま生きていれば本当に一国の首相になってもいいくらいの人だったんじゃないかなあ。それまでの光秀はウジウジした感じに描かれているんだけど、私はセクシーにやりたかった。だから光秀の役は坂東三津五郎さんにお願いしたんです。歌舞伎座の楽屋にまで、お願いしに行ったんですよ(笑)。
ドラマはたくさんの人が観るものなので、既成の価値観はちょっと疑ってみる眼差しというものを、どの作品にも必ず入れるようにしています。「ふたりっ子」もそうだし、「功名が辻」の3人のヤクザの組長たちや光秀の視点もそう。みんなが正しいと思っていることや、みんながこうだと思っていることも角度を変えると全然違って見えるんだという、新しい発見やドキッとする感じを大切にしています。「功名が辻」もそんな部分を気にしながら観てもらえたら、もっと楽しめると思いますよ。
1951年東京生まれ。 オリジナル作品を中心に多数のテレビドラマの脚本を執筆。NHK朝の連続TV小説「ふたりっ子」では第15回向田邦子賞と第5回橋田賞をダブル受賞。代表作として「功名が辻」(NHK)、「長男の嫁」(TBS)、「アフリカの夜」(CX)、「四つの嘘」(テレビ朝日)など。
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「功名が辻」をやると決まったときの感想は?
私が一番魅力に感じたのは、この物語が桶狭間から関ヶ原の戦いを経て、さらに江戸幕府が開幕するまでのお話だったから。こんなに長い時代を描いた大河ドラマはいままでなかったんですよ。ということは、新しく出来ることがいっぱいある。時代背景として大きな事件はいくらでもあるので、それを夫婦の物語にからめることでストーリーは大きくひろがると感じました。
新しく出来ることとは?
前から海外ドラマの「24」の手法を、大河ドラマでやったらおもしろいと確信していて、この機会にぜひ!と思ったんですけど、それは却下されました(笑)。
脚本を書くうえで気をつけたことは?
最初に思ったのは、あの頃も現代も変わらないということ。お城は会社で、殿様が社長で、みんな人事異動でハラハラしている。国替えとか、誰に出世が抜かれたとか、いまと同じですよね。結局、人間はあまり成長しないんだなと…。ただ現代と大きく違うのは戦国時代はあまりにも生と死が隣合わせじゃないですか。いろいろな資料を調べていたら、戦に行った男は取った首を腰紐にぶら下げて帰ってくるらしいんです。夫は疲れて眠るんですが、お城で行なう首実検に出すために朝までにその首を洗って髪を結い直して、首が立たなかったらつっかえ棒をしてきれいに並べておかなければならない。それをやるのが女だったんです。当時は下克上の時代ですから、首の中には隣に住んでいた人がいることもある。明日になったら自分の亭主の首を、隣の奥さんが洗っているかもしれない。そういう状況の中ではきっと男女の情愛も激しかっただろうし、子孫を残したいという気持ちもものすごく強くて、そうした命ギリギリのところで激しく生きていた人々、夫婦の姿を描きたいと思いました。
それにいつも主役は信長とか秀吉とか家康ですよね。でも今回はいつもなら脇役の人たちが主役だった。殿様の目線ではなく、下からの目線という新しい見方で「功名が辻」を書こうと決めたんです。
信長、秀吉、家康の描き方もおもしろいですね。
この人たちがドラマになると、いつもは素敵な部分だけ描かれるじゃないですか。 私は3人のヤクザの組長というイメージにしたかった(笑)。キャラクターが違う3人の恐ろしい親分に仕えた山内一豊という感じで、毒強くこの3人は描いたんですよ。 だから奥さん役の女優さんにも、ヤクザの組長の姉さんみたいになってくださいとお願いしました(笑)。
イメージ通りになりましたか?
はい。とくに浅野ゆう子さんは、「わかりました」と言って一発で姉さんを演じてくれました。さすがでした(笑)。
ご自分の脚本の中で一番いい男は?
明智光秀です。光秀は教養人で、濃姫と淡い恋心を持ちながらも結局濃姫の夫になった信長を討たなければならなかった。一番教養があって、一本筋が通っていて、いろんな人の気持ちがわかる人なのに。戦国時代はバッサバッサいく人じゃないと成功できなかったんですよ。いま生きていれば本当に一国の首相になってもいいくらいの人だったんじゃないかなあ。それまでの光秀はウジウジした感じに描かれているんだけど、私はセクシーにやりたかった。だから光秀の役は坂東三津五郎さんにお願いしたんです。歌舞伎座の楽屋にまで、お願いしに行ったんですよ(笑)。
最後に大石さんが脚本を書くうえでこだわっていることは?
ドラマはたくさんの人が観るものなので、既成の価値観はちょっと疑ってみる眼差しというものを、どの作品にも必ず入れるようにしています。「ふたりっ子」もそうだし、「功名が辻」の3人のヤクザの組長たちや光秀の視点もそう。みんなが正しいと思っていることや、みんながこうだと思っていることも角度を変えると全然違って見えるんだという、新しい発見やドキッとする感じを大切にしています。「功名が辻」もそんな部分を気にしながら観てもらえたら、もっと楽しめると思いますよ。