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【三国志ファン必見の話題作】『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』見どころや時代背景を解説!

中国の人気作家・馬伯庸の小説を映像化した歴史サスペンス『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』を、チャンネル銀河では8/10(木)よりCSベーシック初放送!
そこで今回は、作品の見どころや、視聴にあたって知っておきたい時代背景などを、歴史コラムニストの上永哲矢氏に解説していただきました。


 

風起隴西――。どことなく、ミステリアスな響きを持つタイトルである。日本語でいえば「隴西に風が吹く」、あるいは「風が起こる」といったところか。三国志が好きな人であれば「隴西」の地名に、ピンとくるかもしれない。隴西郡(現在の甘粛省南部)は後漢時代に「涼州」や「雍州」と呼ばれた州の一部で、董卓(とうたく)の出身地として名前が出てくる。

物語のスタートは第一次北伐(街亭の戦い)から

西方の辺境に位置しているため、あまり目立たない隴西だが、228年に始まる蜀漢の諸葛亮(孔明)の「北伐」では、この周辺が大きな舞台となる。曹魏を打倒し、漢王朝を復興する――。諸葛亮は漢中から北上し、現在の甘粛省の入口にあたる天水・南安・安定を降し、隴西へと進出するのだ。

©2022 New Classics Television Entertainment Investment Co.Ltd

歴史上、諸葛亮の北伐は5度におよぶ。
228年春 第一次北伐(街亭の戦い)※街亭で馬謖が敗れる
228年冬 第二次北伐(陳倉の戦い)※郝昭に敗れる
229年春 第三次北伐(陳倉の戦い)※武都・陰平の両郡を平定
231年春 第四次北伐(祁山の戦い)※食料不足で李厳が撤退を進言
234年春 第五次北伐(五丈原の戦い)※諸葛亮陣没で全軍撤退

ドラマ『風起隴西』は、まさにその第一次北伐のときから話が始まる。諸葛亮は部下の馬謖(ばしょく)を派遣し、重要拠点の街亭(がいてい)を守らせる。しかし、馬謖は命令に背いたため、魏の将軍・張郃(ちょうこう)に、これを奪われてしまうのだ。

軍令違反をおかした馬謖を、諸葛亮は泣く泣く処刑する「泣いて馬謖を斬る」の故事。おなじみの名場面だが『風起隴西』では、これを巧みに歴史サスペンスにアレンジしている。本作の劇中では、馬謖は命令に背いて負けるのではない。間諜(スパイ)が流した情報と敵の進軍ルートが間違っており、蜀軍に偽りの情報が流され、的確な備えができずに敗れる展開となっているのだ。

 

「三国志」に登場する武将・文官たちも多数登場

この馬謖のほか、王平(おうへい)、魏延(ぎえん)、高翔(こうしょう)、楊儀(ようぎ)、李邈(りばく)、李厳(りげん)、劉禅(りゅうぜん)といった実在の錚々たるメンバーも登場する。それでも通常の「三国志」ドラマに比べると、だいぶ限られた数だ。

このドラマの主人公は、蜀漢の司聞曹(しぶんそう)というスパイ組織に属する陳恭(ちんきょう)と、荀挧(じゅんく)である。先の街亭失陥も、曹魏に潜入させたスパイ・陳恭の偽情報がもたらしたもの。つまり、蜀漢側のスパイの裏切りが敗北の原因であった。そこで、彼の親友・荀詡は、陳恭に接触して殺害せよという密命を受ける…。

©2022 New Classics Television Entertainment Investment Co.Ltd

諸葛亮や楊儀といった実在の人物は、いわば脇役だが、彼らがいなければ話にならないし、いずれも存在感がある。そして物語の軸はもうひとつある。それが、諸葛亮と李厳という2人の幹部による、軍の方針をめぐる対立だ。

史実でも、この両名にはひと悶着があった。李厳は兵糧の輸送に失敗し、北伐のさなかにある諸葛亮の足を引っ張る行ないをして、その罪で庶民に降格されている。本来、彼は有能な人物であった。劉備の臨終に諸葛亮とともに枕元へ呼ばれ、太子の劉禅を補佐するよう、後を託されたほどだ。

 

人間・諸葛亮。彼と李厳の対立も、大きな見どころのひとつ

本作においても、両者の関係は非常に悪く描かれている。李厳は「諸葛亮の専横で苦しむものがいる」などと言い放つ。見方を変えれば、確かに当時はそう見る者もいたかもしれない。実際233年には益州南部で反乱が起きており、反・諸葛亮の動きもあったのだろう。そうした対立が、作中のスパイたちの動きにも影響を与えている。

また諸葛亮はもちろん、郭淮(かくわい)や張郃(ちょうこう)といった魏の将たちも、当然ながら情報収集などのため、スパイを盛んに使ったことだろう。彼らの存在や活躍は歴史書にこそ記されない。しかし、実際に歴史を動かすのは兵士や民衆をはじめ、名も無い多くの人々であったことを改めて考えさせてくれる。

©2022 New Classics Television Entertainment Investment Co.Ltd

また、諸葛亮は既存のように天才的な人物ではなく、組織運営や人間関係に悩むひとりの人間として描かれる。その苦悩も見どころといえよう。

過去、三国志のドラマといえば『三国志演義』の流れにある程度忠実につくられたものが定番だった。『三国演義』(1994)、『三国志 Three Kingdoms』(2010)が、その代表格だろう。

だが近年は『三国志〜趙雲伝〜』(2015)、『三国志〜司馬懿 軍師連盟〜』(2017)、『三国志 Secret of Three Kingdoms』(2018)など、特定の人物や出来事をメインにした作品が多く制作されている。

定番の関羽や諸葛亮は脇にまわり、趙雲や司馬懿、献帝など、これまで脇役だった人物が主役となり、丁寧に描かれている。架空の人物も多数登場させ、たくみに歴史上の人物と絡ませることで、まったく新しい物語が次々と生まれている。本作『風起隴西』も大変な意欲作であり、そうした傑作・力作に名を連ねることとなるだろう。

 

上永 哲矢(うえなが てつや)
歴史コラムニスト/紀行作家。神奈川県出身。日本の歴史、および『三国志』をはじめとする中国史の記事を多数手がけ、各種雑誌やWEBサイトに寄稿、連載も持つ。日本全国および中国・台湾各地を取材し、それらの史跡取材で得た情報を著作として提供している。著書に『三国志 その終わりと始まり』(三栄書房)、『戦国武将を癒やした温泉』(天夢人/山と溪谷社)(秀和システム)など。

 

番組情報

『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』

番組サイト https://www.ch-ginga.jp/detail/rousei/
放送日時 8/10(木)スタート (月 - 金)13:00-14:00 ※スカパー!1,2話無料放送
出演 チェン・クン(陳恭[ちんきょう]/思之[しし])、バイ・ユー(荀詡[じゅんく]/孝和[こうわ])、ニエ・ユエン(馮膺[ふうよう]/少敬[しょうけい])、アンジェラベイビー(柳瑩[りゅうえい])、スン・イー(翟悦[てきえつ]) ほか
脚本 ジン・ハイシュー、ジン・ユー
演出 ルー・ヤン(『ゴッドスレイヤー 神殺しの剣』『修羅:黒衣の反逆』)
制作 2021年/中国/字幕/全24話/[原題]風起隴西

「風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-」のスカパー!1,2話無料放送を観るには

 

第1話無料オンライン試写会を実施!

『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』の第1話が観られる無料オンライン試写会を実施します。番組ページより、ご覧いただけます。
(実施期間:7/10(月)10:00~8/9(水)23:59)

番組ページ *第1話無料オンライン試写会はこちら

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